猫の目
学校から帰る度に、アパートのドアのそばでじっと臥せている白い猫を見るようになって五日目のことだった。一見して、どこかで捨てられた猫のようであった。顔は貧相な逆三角形で、ほこりっぽく、弱々しい体つきだった。後足の深い傷が痛そうで、猫はひっきりなしに小さい舌でなめていた。
わたしは猫の目に心が引かれた。澄んだ青空のようにさわやかな目は、いかにも、人間と一緒に暮らしたいと訴えていた。
「ごめんね。ここはアパートだから、お前を飼うわけにはいかないわ。でも、餌ぐらいなら、少しあげるけど……」
私は猫の頭をな で な が ら言っ た。そ し て缶 詰の魚を出 した。猫は脇 目も ふ ら ず に む さ ぼ り食 べて し ま っ た。
そ れ が き っ か け で、猫は毎 日わ た しの帰 りを待ち続 けた。時 々恋 人も連 れて き た が、臆 病で、泥 棒の よ う な顔をし た黒猫だ っ た。
あ る雨の日か ら猫の姿が見え な く な っ た。わ た し は、ひ ょ っ と し て、猫はほかの家の秋 刀 魚で も盗ん で殺さ れ た ので は な い か と、ずっと悲しく思っていた。
一か月後、わたしは思いがけず、あの猫に出会った。猫は、近所に住んでいる十数億の遺産相続に悩んでいるおじいさんに抱かれて、氷のような冷たい目でわたしを見つめていた。裕福な生活に変わったのだろうか。猫は丸々と太って、毛も真っ白で、ふさふさしていた。
おじいさんと挨拶したとき、わたしは体中寒気がした。飼い主の目つきが、猫のいとあまりにも似すぎていたからである。あの春の海を思わせるのどかな猫の目は一体どこに消えてしまったのか。
猫的眼睛
从学校回来,已经连续五天了,看到一只白猫一动不动的趴在公寓的门前。一看就知道,是一只被遗弃的野猫。一张贫穷的倒三角脸,浑身脏兮兮的,一副体弱多病的样子。可能是后足的伤口很疼,白猫用小舌头不停的舔来舔去。
可是,猫的眼睛却深深的吸引了我。就像万里无云的蓝天一样清澈、爽朗,总感觉似乎在向我诉说着想和人类一起生活的心声。
“对不起,这里是公寓,我不能养你的。不过我还是可以少给你一些东西吃……”我抚摸着猫的头说着,给了它一些罐头鱼。猫目不斜视、狼吞虎咽的吃光了。
从那以后,猫每天都在公寓门口等我回来。有时还带着一只胆小的像小偷一样的黑猫来,可能是它的情人吧。
但是从一个雨天开始猫就消失了。万一要是猫偷了别人家的秋刀鱼被杀了也说不定,我一想到就非常伤心。
是出乎我意料的是,一个月后我竟然遇到了那只猫。它被住在我附近的正在为几十亿遗产没人继承而发愁的老爷子抱着,用一副冰冷的目光打量着我。现在变得生活富裕了吧?猫圆圆胖胖的,一身雪密厚的毛。
和老爷子打招呼时,我不由得打了个冷颤。因为主人的目光和猫的出奇的相似,同样的冰冷。那双让我觉得像春天的大海一样清澈的眼睛到底消失到哪里去了?